教育分野でのメタバース活用が急速に広がっています。
国内では、通信制高校や自治体がバーチャル空間を活用した授業やイベントを実施するなど、学びの在り方が変化しつつあります。
メタバースは、地理的な制約を超えて学習環境を共有できるだけでなく、実験やシミュレーションなど現実では難しい体験を可能にします。
本記事では、教育メタバースの基本概念から国内の活用事例、導入メリットや課題までを解説します。
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メタバースとは、インターネット上に構築された三次元の仮想空間を指します。
ユーザーはアバターと呼ばれる自分の分身を操作し、他者との交流や経済活動、学習など、現実に近い体験をオンライン上で行うことができます。
近年はVR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術の進化により、より高い没入感を持つメタバース空間の活用が進んでいます。
この仮想空間の特徴は「現実世界の制約から解放された環境」を提供できる点にあります。
例えば、距離や時間に縛られずに会議や授業を行えることから、企業や教育機関が新たな活用方法を模索しています。
世界的にはMeta社のHorizon WorldsやRoblox、国内ではmonoAI technology株式会社などが注目されています。
メタバースは単なる娯楽の場ではなく、人々の学びや働き方を再構築するプラットフォームとして位置付けられています。
教育分野でも、オンライン授業や共同学習の新しい形として活用が広がり始めています。
教育現場で広がるメタバース活用の動き
教育現場では、メタバースを活用した新しい学習形態が着実に広がっています。
特にコロナ禍以降、対面授業が制限されたことを契機に、オンライン授業の延長として仮想空間を利用する学校や塾が増加しました。
文部科学省の調査によると、2023年時点で全国の教育機関の約15%が、メタバースまたは3D仮想空間を活用した授業やイベントを試験的に導入しています。
この動きの背景には、教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速があります。
従来のeラーニングやビデオ授業とは異なり、メタバースでは生徒同士や教師とのコミュニケーションがリアルタイムかつ立体的に行えるため、教室に近い臨場感が得られます。
また、地理的に離れた学校同士が共同授業を実施する事例も増えており、地域格差の是正にも寄与しています。
さらに、国内企業による教育特化型メタバースの開発も進んでいます。
たとえば、バーチャルキャンパスやバーチャルオープンキャンパスを提供するプラットフォームが登場し、生徒募集や進路指導などにも活用されています。
こうした流れは、教育の枠組みそのものを再定義する動きとして注目されています。
メタバースが教育に与える影響
メタバースの導入は、教育の在り方に大きな変化をもたらしています。
最大の特徴は、学習の場が「物理的な空間」から「仮想空間」へと拡張された点です。
これにより、教室に集まることが難しい生徒や、遠隔地に住む学習者も同じ環境で学ぶことが可能になりました。
結果として、教育機会の均等化が進みつつあります。
また、メタバースは学習体験の質を高める効果もあります。
従来のオンライン授業では一方向的な情報伝達にとどまりがちでしたが、メタバースでは3D空間を通じた協働作業や体験的学習が行えます。
たとえば理科の実験を仮想空間で再現したり、歴史上の出来事をその時代の都市空間で体験したりと、抽象的な知識を具体的な感覚として理解できます。
さらに、心理的な側面でもポジティブな影響が見られます。
アバターを介して発言することで、対面では発言をためらう生徒が積極的に意見を述べられるようになったという報告もあります。
これは、学習意欲の向上やコミュニケーション能力の育成にもつながる要素です。
総じて、メタバースは「学びの個別化」と「学びの拡張」を同時に実現する新しい教育基盤といえます。
メタバースの教育への具体的な活用シーン
メタバースは、単にオンライン授業の代替手段にとどまらず、教育現場のさまざまな場面で応用されています。ここでは、代表的な4つの活用シーンを紹介します。
学校・塾でのオンライン授業
メタバース空間を活用したオンライン授業では、教師と生徒がアバターを通じて双方向に交流できます。
従来のビデオ会議ツールと異なり、空間上での位置関係やジェスチャーを用いたやり取りが可能なため、リアルな授業に近い体験が得られます。
実際に、通信制高校や進学塾などではVR空間での授業を導入し、出席率や学習意欲の向上につながっている事例もあります。
学校行事・文化祭などのイベント開催
メタバースを利用した学校行事の開催も増えています。
バーチャル文化祭やオンラインオープンキャンパスなどを通じて、生徒が自ら展示ブースやステージを企画・運営できます。
これにより、表現力や協働性を育むだけでなく、地域や国を超えて多様な人々が参加できるイベントへと発展しています。
バーチャルキャンパス化による学校運営
一部の大学や高校では、学校全体をバーチャルキャンパスとして再現する動きも進んでいます。
仮想空間上に教室、職員室、図書館などを配置することで、日常的な学習や相談、進路指導をオンラインで完結できます。
通学が難しい生徒にとっては大きな支援となり、学習継続率の改善にも寄与しています。
障がいをもつ学生への支援ツールとしての利用
メタバースは、身体的・精神的な理由で通学が困難な学生にとっても有効です。
アバターを介して参加できるため、身体的制約を超えて授業や交流に参加できます。
また、音声認識や字幕表示機能などの支援技術と組み合わせることで、学習のバリアフリー化がさらに進むと期待されています。
メタバースを教育に取り入れるメリット
メタバースを教育に導入することには、学習効果の向上や教育機会の拡大など、さまざまな利点があります。
ここでは、代表的な3つのメリットを解説します。
現実世界では扱えない対象・環境での学習が可能
メタバースでは、現実では実現が難しい学習環境を再現できます。
たとえば、宇宙空間での物理実験や、人体内部の構造観察、古代都市の探索など、危険性やコストの問題で現実では難しい体験を安全に行うことが可能です。
これにより、抽象的な知識を具体的な体験として理解できるため、学習効果が高まります。
ゲーム感覚で楽しく没入的に学べる
メタバースの最大の特徴は、学習が「体験」として行える点です。
アバターを使って課題に挑戦したり、協力プレイ形式で問題を解決したりすることで、生徒は楽しみながら自然に学べます。
実際に、ゲーミフィケーションを取り入れた学習では従来型授業に比べて平均20〜30%の理解度向上が報告されています。
没入感の高い環境が集中力を高め、学習意欲を維持する効果もあります。
登校困難な生徒もオンラインで学習参加できる
病気や不登校などで通学が難しい生徒にとっても、メタバースは新たな学びの場を提供します。
自宅から仮想教室にアクセスし、他の生徒と同じ空間で授業やグループワークに参加できます。
これにより、社会的な孤立を防ぎ、学習意欲を取り戻すきっかけにもなります。
実際、メタバース型学習を導入した一部の通信制高校では、出席率が導入前より約25%向上したという結果もあります。
メタバース活用の課題と注意点
教育におけるメタバース活用は多くの可能性を秘めていますが、同時に解決すべき課題も存在します。導入効果を最大化するためには、以下のような点に注意が必要です。
初期導入コスト・機材費がかかる
メタバースを教育現場に導入するには、VRゴーグルや高性能PCなどの機材が必要になる場合があります。
これらの機材費は1台あたり数万円から十数万円に及び、学校規模で導入するとなると予算負担が大きくなります。
また、システム構築やメンテナンスにも一定のコストがかかるため、継続的な予算計画が求められます。
VR酔いなど身体的な負担の可能性
メタバース空間で長時間活動すると、映像との視差や動きの違いによって「VR酔い」を引き起こすことがあります。
特に子どもや視覚に敏感な人にとっては身体的負担が大きくなる可能性があります。
そのため、授業時間の調整や休憩の確保など、学習設計の段階で適切な対策を講じる必要があります。
教育設計・運営面でのノウハウ不足
多くの教育機関では、メタバースを活用した授業の設計や運営ノウハウがまだ十分に蓄積されていません。
教員側にとっても、仮想空間上での指導方法や評価手法が確立されていないため、試行錯誤を伴うケースが多いのが現状です。
そのため、導入時には専門企業や外部コンサルタントとの連携、教員研修の実施などが不可欠です。
このように、メタバース教育は多くの利点を持ちながらも、技術・運用・人材の3つの側面で課題を抱えています。
慎重な計画と検証を重ねながら導入を進めることが重要です。
メタバース教育の活用事例
国内では、すでに複数の教育機関や企業がメタバースを活用した教育の実践を始めています。
ここでは、代表的な5つの事例を紹介します。
EuLa通信制中等部

株式会社アットマーク・ラーニングは、monoAI technology株式会社と連携し、2025年4月に「EuLa通信制中等部」を開校します。
本校は、発達障害やギフテッド、不登校など、対面での学校生活に困難を抱える生徒のために、2Dメタバース「ZEP」を活用して開発された新しい教育機関です。
文部科学省の調査では、2024年度の不登校児童は約34.6万人に達しており、長期化が深刻な課題となっています。
こうした背景を受け、「どこにいても学び続けられる環境」を実現することを目的に設立されました。
メタバース校は、生徒が安心して過ごせるよう柔らかな色調や植物を取り入れたデザインを採用し、交流スペースと学習スペースの2エリアで構成し、自宅にいながら登校体験に近い学びを提供します。
育英高等学校

学校法人武井育英会育英高等学校は、monoAI technology株式会社と連携し、ICT教育プロジェクトの一環としてメタバースを活用した教育支援を導入しました。
本取り組みでは、ゲーミングPCの導入から専用メタバース空間の構築、3Dモデリング授業の実施と作品監修までを一貫して支援。
生徒のICTスキル向上と創造的学びの促進を目指しています。
専用空間は2Dメタバース「ZEP」上に構築され、「のびのび過ごせる暖かい空間」をコンセプトに設計。
ホームルームやイベント、部活動にも活用できるエリアを備えています。
育英高等学校は、ICT活用を通じて生徒の探究心と表現力を育むとともに、メタバースという新しい学習環境をキャリア形成支援の一環として位置づけています。
姫路市

兵庫県姫路市は、スマートシティ事業の一環として、2Dメタバースプラットフォーム「ZEP」を活用したオンライン学習環境の提供を開始しました。
2025年1月から市内5校の中学校で運用を開始し、今後は対象校を順次拡大予定です。
本プロジェクトは、生徒の学習意欲と基礎学力の向上、不登校生徒を含むすべての中学生への教育機会の均等化を目的としています。
「楽しく学ぶ」をコンセプトに、進捗に応じてポイントを獲得できる仕組みを導入し、学習への主体的な参加を促します。端末やスマートフォンから簡単にアクセスできる設計により、誰もがストレスなく学べる環境を整備。
今後は姫路城など地域文化を取り入れたアップデートを予定しており、地元への親しみを感じながら学べるメタバース教育のモデルケースとして注目されています。
イーオン

英会話教室のイーオンでは、メタバース上で英語を学べるサービス「AEONVR」を展開しています。
受講者は自宅や職場など、場所を問わずにアバターを通じてレッスンに参加でき、まるで海外にいるような臨場感の中で学習を進めることができます。
「AEONVR」は、米国カリフォルニア州のImmerse Inc.が提供するVR言語学習プラットフォーム「IMMERSE(イマース)」を基盤としており、約40種類のシーンを体験しながら英会話を実践できます。シーンには、旅行や海外生活でのさまざまな日常場面が用意されており、状況に応じた英語表現をタスク形式で習得することが可能です。
実際に海外で会話する機会が少ない学習者でも、メタバース上で実践的な英語力を身につけられる点が大きな特徴です。
長岡工業高等専門学校
長岡工業高等専門学校では、メタバース技術を活用した仮想キャンパスを構築しています。
このバーチャル空間には、ラウンジやセミナールーム、グループディスカッション用の部屋などが用意され、現実の校舎と同様にエリアごとに分かれています。
利用者は自分のアバターを自由にカスタマイズできるため、個性を表現しながら他の学生と交流することが可能です。
また、特定のイベントでは全国の学生や一般参加者もアクセスでき、学外の人々との意見交換や共同活動が行われています。
こうした仕組みにより、地理的な制約を超えた学びとコミュニケーションの場が実現しています。
まとめ
メタバースは、教育の在り方を根本から変えつつあります。
物理的な教室の枠を超え、どこにいても学びに参加できる環境を実現することで、教育の機会均等化を推進しています。
とくに、不登校や障がいなどの理由で通学が難しい生徒にとって、メタバースは新たな学びの選択肢として重要な役割を果たしています。
また、メタバース空間では、体験を通じて知識を深めるアクティブ・ラーニングが可能です。
理科実験や歴史体験、英会話など、現実世界では難しい学習も安全かつ低コストで実施でき、学習意欲や理解度の向上につながっています。
一方で、機材導入コストやVR酔い、教育設計のノウハウ不足といった課題も存在します。
しかし、教育機関や企業の連携によって改善が進んでおり、今後さらに多様な教育モデルが誕生していくと考えられます。
メタバース教育は、単なる一時的なトレンドではなく、「誰もが自分らしく学べる社会」を実現するための新しいインフラと言えるでしょう。
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